理学療法臨床実習レポートにおける考察の書き方について(初期評価編)

 

前回、理学療法実習レポートにおける統合と解釈について、コチラの記事で紹介しました。

今回は、理学療法実習レポートにおける『考察』について、書いていきます。対象は、脳卒中片麻痺患者さんです。

 

優先的に解決するべき問題点は何かを記載しましょう

患者さんの検査・測定を実施し、その後の統合と解釈で、ICFの障害構造の表を作り各領域における問題点を挙げましたね。以下は一つの例です。

宮崎哲哉.ICFに基づく評価の進め方と記録.PTジャーナル第39巻第10号.2005

 

図を見てもらえば分かりますが、各領域とも問題点がいくつも挙がっています。まず、考察で考えるべきことは、どれを優先的に改善すべき問題点とするか?です。

もちろん、1つだけでなく同時進行的に解決していくことが望ましいです。ハンズオフで対応可能な点(例えば、上の表だと介護保険未申請について情報提供・他職種連携で進めるなど)については、同時進行で進行可能でしょう。

しかし、ハンズオンで対応すべき問題点(例えば、片麻痺者に対する歩行練習)を同時に全て解決するには現実的には難しいことが多いです。理学療法に与えられた時間が有限であり、この限られた時間の中で、どれを優先的にすべきかを自分の評価結果の中から考えて記載します。

ここでヒントになるのは、移乗や歩行という移動要素がADLと非常に密接に結びついているという事実です。そして、根源的なリハの目的、それは、患者さんの生活機能・ADLを改善させることです。そうなると、自ずと理学療法の治療対象は移動要素(特には歩行)をいかに良くしていくかという点になることが多いです。

乱暴に言うと、歩ければ生活は結構なんとかなる、逆に歩けなければ生活は成り立ちにくい、のです。また、歩行スピードによって脳卒中片麻痺患者の退院後の活動可能範囲がある程度推測できてしまうこと、またQOLと深く関わっていることは周知の事実となっています。これについては、本記事終わりに参考記事1)を載せておきますので参照いただけると幸いです。

つまり、移動要素に大きな問題を抱えているようであれば、それが優先的に解決すべき問題点である可能性がとても高いです。

 

もちろん、患者さんの状態によっては優先的に解決すべき問題は異なってきます。例えば、肩関節亜脱臼があり、疼痛に悩んでいるようであれば実際に苦しめられている痛みを改善させて上げる必要があるでしょう。

しかし、移動要素(歩行)が生活機能を再建する上でとても大切であるという事実は知った状態で何を優先解決すべきか考察してください。

 

麻痺そのものの改善を目指すことには、注意が必要!

決して、『心身機能・身体構造』領域にある片麻痺そのものを最も優先すべき問題点であると考え、治療対象としてしまうことは止めましょう。

 

確かに、片麻痺そのものは、統合と解釈を行うと多くの基本動作と関連が強く、それが改善すれば基本動作・ADLの改善につながります。これは間違いないです。そのために、ひと昔の理学療法は、麻痺そのものを治療対象として、その改善のために色々な神経促通手技などを用いて治療に当たっていました。

そこで、長い時間をかけてわかったことは、そのような手技・治療で麻痺そのものは簡単には良くならないということです。ぜひ各国のガイドラインを見てみてください。神経促通手技に対して推奨すべき治療であると太鼓判を押してあるガイドラインはありません2)よ。

ただ、神経促通手技そのものを否定している訳ではありません。現在では、エビデンスが構築されている神経促通手技もありますし、批判の的となりやすいBobath法も現在はBobath Conceptといわれ、手技というよりも概念化しているようです。

麻痺そのものを治療する・したいという視点も決して悪いものではありません。ただし、臨床実習を行っているみなさんが、実習中に、患者さんに効果的に施行することはなかなかに難しいです。

まずは、スタンダードな理学療法からで良いと思います。

 

治療方法とそれを自分が行う理由を記載しましょう

優先的に解決する問題点が定まった後は、その問題を解決するために治療として何を選択するか、そしてその治療を選択した理由を考察に書きましょう。

治療は、基本的には、治療効果があるとされる方法を用いる必要があります。これは、診療報酬請求が出来る(保険から支払いを受けることができる)理学療法士であるからこそ、必ず意識しなければなりません。

北海道の患者さんでも、沖縄の患者さんでも、日本国内の病院であればどこでも、医療保険の中でのリハビリの価格は一律です。(細かく言うと施設基準による違いはあります。)

自分の家族(祖父母)が、もし脳卒中になったら、地域、施設、担当理学療法士で治療内容に大きな差があることは、嫌ではないですか?私は、嫌です。マニュアルのような治療になることも嫌ですが、良くなるんだか何だか分からない治療をされるのも嫌です。ちゃんと良くなると分かっている方法で、治療に当たってほしいです。

そのためには、各種ガイドラインは必ず確認(脳卒中ガイドライン2015、PT協会発行の診療ガイドラインなど)しましょう。現時点で、どのような治療介入に効果・根拠があるか無いかわかりやすくまとめてくれています。記事最後に載せておきます。少しでもお役に立てると幸いです。

そして、自分の治療理由に必ず文献による後ろ盾を作ってください。学生の間は、学校で使った教科書とか先生が配布してくれた授業の資料とかでもOKです。治療理由にしっかりと筋が通っていれば、スーパーバイザーは、よほど患者さんの不利益になると判断しない限り、Goサインを出してくれるでしょう。その治療が良かったかどうかは、後で評価してみて考えれば良いのです。

理学療法の目標とその理由を書きましょう

短期目標、長期目標、最終目標とその理由を記載しましょう。時期は従来通り、短期目標は2週間、長期は4週間くらいで良いでしょう。私は最終目標まで書くことを学生に勧めています。

私のいう最終目標は、患者さんが入院リハビリを終えて、生活に戻った時の時点のことを指します。リハビリの場を離れ、生活場面に戻った時の患者さんの生活は、一体どのようなものになっているのかを考えて、予想して書いてもらうようにしています。

自宅に帰ることができているのか?移動(歩行)はどうやって行っているのか?生活の中で、装具・歩行補助具が必要なのか?ADLに介助は必要なのか?介護保険の助けが必要なのか?など、もちろん予想が大半になりますが、書いてみることを勧めます。

 

短期目標においては難しいかもしれませんが、長期・最終目標設定においては、必ず予後予測ツールを用いて、その結果も参考に目の前の患者さんの目標設定を行ってください。

予後予測は色々な人が色々な方法で試しており論文化されています。ちゃんと、文献の後ろ盾を作れば、どれを使わなければならないというものはありません。学校教育で標準的に学生に伝達されているのは、やはり二木の予後予測でしょうか。これは、どの学校の学生もほとんど知っているようです。1980年代に出版された古い論文ですが、検証論文もいくつか出ていて、やはり非常に良く予測できる能力があるようです。

予後予測については、兵庫医科大学リハビリテーション医学教室教授の道免先生の書籍を参考にしてください。本当に勉強になる良い書籍です。ぜひオススメです。

 

まとめ

初期評価の考察に書くべきことをまとめてみました。少しでもお役に立てますように。

考察に書くべきこと
  1. 優先的に解決すべき問題点は何か?そして、その理由
  2. 上記で挙げた問題点を解決するための治療は何?そして理由は?※文献の後ろ盾を忘れずに!
  3. 短期・長期・最終目標の設定と設定の理由

 

※参考

1)

脳卒中患者の歩行予後予測について

2017.04.23

2)

脳卒中リハビリガイドラインupdate

2016.12.12

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