第5回日本運動器理学療法学会学術集会に参加してきました。

 

2017年9月23~24日に札幌で開催された第5回日本運動器理学療法学会学術集会に参加してきました。今回は残念ながら自身の発表はなかったのですが、大変勉強になりました。

講演の内容などを私なりにまとめてみたいと思います。

 

今回の特別講演プログラム

特別講演Ⅰ
テーマ 「運動器障害による疼痛に対する理学療法」

講師  鈴木 重行先生(名古屋大学大学院)
司会  対馬 栄輝先生(弘前大学大学院)

特別講演Ⅱ
テーマ 「腰部障害に対する運動療法」
講師  伊藤 俊一先生(北海道千歳リハビリテーション大学)
司会  山崎 肇先生(羊ヶ丘病院)

特別講演Ⅲ(徒手理学療法部門)
テーマ 「日本スピードスケートナショナルチーム帯同におけるマニュアルセラピストの役割」
講師  佐伯 武士先生(株式会社ELT健康増進研究所)
司会  竹井 仁先生(首都大学東京大学院)

特別講演Ⅳ(ウィメンズヘルス・メンズヘルス理学療法部門)
テーマ 「女性の体幹機能をどう捉え、アプローチするか」

講師  石井 美和子先生(Physiolink)
司会  山本 綾子先生(甲南女子大学)

シンポジウム
テーマ 「運動器障害に対する理学療法の評価・アプローチ」

シンポジスト
赤坂 清和先生(埼玉医科大学大学院)
加藤 浩先生(九州看護福祉大学大学院)
千葉 恒先生(富良野協会病院)
司会  木藤 伸宏先生(広島国際大学),石田 和宏先生(えにわ病院)

 

特別講演Ⅰ(鈴木重行先生)

特別講演Ⅰは、鈴木重行先生でした。日本理学療法士協会が2011年に出版した理学療法ガイドライン制作の部会長をした先生ですね。高名な先生です。

 

Keyword:感作、wind up現象、アロディニア、理学療法診療ガイドライン、IDストレッチング

 

腰椎椎間板ヘルニアの若年男性症例の治療前後での変化のビデオを冒頭であげて、その後痛みが引き起こされるしくみなどについて、主に解剖・生理学的な説明がありました。

ポイントとしては、疼痛には侵害受容性疼痛である急性痛である一次通と、慢性痛とも言える二次痛が有り、理学療法士が主に外来で治療対象とするのは二次痛であると述べていました。

痛みを放置していると、侵害受容ニューロンの感受性が亢進して、アロディニア(通常では痛みを引き起こさない刺激によって生じる痛み)が生じる可能性があるため、早急に対処するべきだと。

実際の治療場面のビデオでは、DNICアプローチを用いて疼痛緩和を図っていました。DNICとは、Diffuse noxious inhibitory controls 頭文字の略です。痛みで痛みを緩和する方法の事を言います。

でも、この治療場面、講演冒頭で提示した症例でなかったので、会場に居た参会者は、えっ?なんで最初にビデオ見せた症例の治療じゃないの?と思ったことでしょう。私は思いました。

 

全体としては、疼痛の基礎の部分をわかりやすく説明してくださったわかりやすい講演でした。

 

シンポジウム 「運動器障害に対する理学療法の評価・アプローチ」

赤坂先生パート

新人理学療法士と運動器スペシャリスト理学療法士との違いを評価・治療などさまざまな違いから論じていました。そして、新人理学療法士が運動器スペシャリストになるためには、卒後の研修プログラムの充実が重要であると述べていました。

具体的に、どうすれば良いかということ点についてもお話されていましたが、所属する施設・病院で評価・治療に関するエビデンスについて一緒に検討するシステムを作ることが重要であるということでした。個人でどうこうするのではなく、そのような時間をどこかにシステマティックに作っていくことが大切だと。

また、現在、運動器スペシャリストを要請するためのレジデンシープログラムの開発・大学院教育の開発に着手しているとのことでした。レジデンシープログラム、論文を書くためでなく、専門知識・技術を深めるための大学院教育は個人的にも大変興味深い内容でした。米国の後追い感は拭えませんが、多くの方が期待している部分では無いでしょうか。

加藤先生パート

股関節・筋電図で有名な先生ですね。自身の基礎的な研究とその研究を臨床でどのように活かせばよいかという話の進め方でした。

股関節外転筋力発揮には、骨盤の前後傾の程度が重要であり、立位トレーニングなどの際には、しっかりと該当筋の触診を行うことが重要であること、変形性股関節症の患者さんで歩容が崩れている方でも、Initial ContactでしっかりとHeal Contactを作っていくような歩行指導が重要であるというようなお話がありました。

 

千葉先生パート

千葉先生は、素晴らしい声と喋りで会場を若干ざわざわさせておりました(笑)もう一回、講演聞きたいです。

千葉先生は、ビデオを用い症例提示して、実際のクリニカルリーズニングを言語化して実際の評価・治療を進めている様子を見せてくださいました。かなり具体的でわかりやすいお話でした。

椎間関節痛の鑑別試験として、腿上げテストという検査があることを初めて知りました。

 

フロアーとの対話

Q. (座長から)評価と治療をどのように考えているか?

A.

(赤坂)評価を進めることで、患者さんを大まかなサブグループに分類することが出来る、しかし、同じサブグループに分類された患者さんでも、同じ治療が効果的かというと、実際はそうでないこともあるために、患者さんの反応を見ながら治療は適宜変更していく必要がある。

(加藤)講演でも伝えたが、骨盤の角度によって股関節外転筋力の出力はひとそれぞれであるために、画一的な対応でなく個別対応が重要である。評価と治療は一体のもの。

(千葉)現在は訪問リハを行っているが、疾患ベースでなく障害ベース・生活ベースの理学療法評価・治療が大変に重要だと感じている。

 

Q1. 臨床は多忙であることからどうしても日常の評価が客観的・定量的なものになってしまい、先生たちの言うような個別対応が難しいと感じている。どうすればよいか?

A.(赤坂)皆さん、1単位で1日20人のように患者さんを回していることが多いと思うが、それでは良くない。患者さんと患者さんの間に、記録をとる時間を作ることが重要。1単位3人で1時間使うのではなく、1単位2人で1時間のようなカタチをとらなければいけない。そうすることで変わってくる。

(加藤)組織の中で、システマティックに研究のための時間を作っていくことである。1人が研究活動をしている場合には、その他の人が患者さんを見るなどして、互いに補完し合いながら研究の時間を作ることが重要だ。

(千葉)同様に、システムとして研究時間を確保していくことが重要と感じる。個人の頑張りにまかせては続かない。しかし、そのためには、所属長の理解が大変に重要になる。所属長が、そのような活動に後ろ向きであれば、なかなか難しいと思う。そのため、より大きな組織、例えば、病院であったり、日本理学療法士協会といった部門からの圧力が必要かもしれない。

Q.2 千葉先生に質問。病院外での研究活動など行っているようだが、お金と時間はどうしたのか?

A.業務は業務としてこなしていた。ただ、昼休みの時間を使ったり、夕方1時間程度早く上がらせてもらってその時間を使うようにしていた。そのために、今回発表したプロジェクトに関してもカタチになるまで2年かかった。

Q.3 理学療法評価を進める上で、鑑別が大変重要であると感じている。体系的に学べるプログラムを提供しているところはある?

A.(赤坂)日本においては、そのようなプログラム提供している機関は無いのではないか。腰痛については、Red flagsという教科書があるため、そちらで自己学習を進めても良いのではないか。もし鑑別出来なくて何かアクシデントなどがあったということであれば、ぜひ学会報告して皆と共有して欲しい。

 

Q.4  クリニカルパスの影響もあり、運動器は術後のリハビリがどうしても画一的になりやすい。どうすれば良いか?

A.(赤坂)どの時点で、どのような動作が獲得できたというような機能的な転帰は重要であるが、どうしてもパスを外れてくる患者も多いと思われる。パスにのってこない患者について検討してみると良いのではないか。もしかしたら、担当PTの影響も大きいかもしれない。例えば、歩行なども次のステップにいくための基準が個々人で違っていたり。そのあたりを見てみるのも面白いかもしれない。

(加藤)術後は特に医師とのコミュニケーションを大切にして欲しい。同じ術式でも個別性が大きいと思う。例えば、医師は理学療法に何を期待しているのか?例えば、THAだとすれば、積極的に可動域を獲得していって欲しいと思っているのか、それとも可動域の改善よりも支持性を獲得していって欲しいと思っているのか。医師とのカンファレンスが重要である。

(千葉)時間が迫っているため、簡潔に述べる。なかなか個別性を出していくことは難しいと思う。現在の医療保険は施設により役割が決まってしまっている。

 

 

特別講演Ⅱ(伊藤俊一先生)

腰痛研究に関するスペシャリストの先生ですね。以下が講演の主な内容です。

 85%の腰痛が非特異的であり原因は不明1)、さらにその半数が慢性化・再発している。痛みが長引けば心理・社会的な要因が拡大し、ますます改善しづらくなるため、早期対応が重要。

さらには、2017年の腰痛診療ガイドライン2)では画像検査・薬物療法は積極的に考えられるべきでなくなっているそうです。そして、運動療法は慢性期腰痛に有効である(グレードA-B)としっかりとしたエビデンスがあるために、理学療法士がしっかりとした評価・治療を行っていくべきだと。

そして、腰痛治療に関する治療概念の変遷を紹介しておりました。

当初は、Williamsが提唱した腹筋群トレーニングを行い腹腔内圧を向上させるというものですが、これはいくら体幹筋力が改善したところで、腹腔内圧が上昇しないことが判明したことから、徐々に廃れていき、

次に、Mckenzieが提唱した腰部伸展をメインとしたエクササイズに移り変わります。

そして、後部靭帯理論へ・・・ということでしたが、全体の流れは私のメモが追いつかず確認できませんでした。

 

伊藤先生の講演で、特に強調されていたのが、慢性非特異的腰痛に対するは、体幹の柔軟性の改善と体幹伸展筋力の改善が大変に重要だということです。世界の研究を見渡せば、これは明らかだと強調されておりました。

 

具体的には、療法士が皆同じ評価法を用いて効果を検証していくことが大変重要であるということを仰っており、体幹ROMの測定方法として、Schober testを推奨されておりました。

 

1)Fujii T, Matsudaira K. Prevalence of low back pain and factors associated with chronic disabling back pain in Japan.2013

2)Noninvasive Treatments for Acute, Subacute, and Chronic Low Back Pain: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians .2017

まとめ

腰痛については、一度もTreatment Based Classificationの話が出なかったのは残念でした。赤坂先生のサブグループ化が重要という話などから、学会としては、良くも悪くも米国の後追いをしていることは感じましたので、TBCについてもぜひ話してほしかった。日本の理学療法は、EBPTとしては、まだまだこれからですね。私も、臨床・研究がんばります。

 

札幌の夜は・・・

札幌の安くて美味しい居酒屋といえば、炎(えん)ですね。他県民はあまり知りません。炎を知っていれば、道民のふりができますよ(笑)週末はどこのお店もいっぱいですから。

 

今月下旬には、奈良での物理療法学会にいってきます。そちらの内容は、この記事よりも上手にまとめたいと思います。

 

では、さようなら~

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