総合臨床実習を上手に乗り切るために~担当ケース評価編~

 

臨床実習で、患者さんを担当することが決まって、家族の方に了解をとって、さぁ、理学療法評価をすることが決まりました。

おそらく評価前日に、スーパーバイザーから、こう言われます。

『患者さんのカルテから情報収集して評価項目を挙げてきて』と。

皆さん、こう言われれば、A4用紙1枚に、評価項目を箇条書きにして提出しますよね?この時、提出するものをグググっとレベルアップさせる方法をお教えします。実習では、脳卒中片麻痺患者をケースとして選択される方が多いと思いますので、脳卒中片麻痺患者を例にしてお話します。

 

学生のみなさんが挙げてくる一例

 

通常、評価項目を挙げてきてと言われた学生が提出する評価項目一覧表は以下のようなものです。

 

◯月×日 評価項目
・意識レベル(Japan Coma Scale)
・ROM
・Br.stage
・MMT
・反射
・筋緊張
・姿勢・動作観察
・基本動作の確認
・ADL(FIM) etc・・・・・

 

まぁ、これはこれで全く悪くありません。学生によっては、患者さんの負担を減らそうと、各姿勢毎で行うとする検査測定を記載してきます。背臥位で◯◯をやって、端座位で××をやってみたいに。

ただ、コレではスーパーバイザーに良い印象を与えることは難しいでしょう。

スーパーバイザーが伝える『患者さんの評価項目挙げてきて』で、学生に本当に伝えたいことは以下になります。

 

『明日から担当ケースの方の理学療法評価を始めることになります。理学療法評価を行う前に、この患者さんが理学療法評価・治療が安全に行える状態なのか、病態やリスクの確認をしてください。その上で、理学療法評価を実施可能と思えば、患者さんの病態・障害にあわせた適切な評価項目を挙げてきてください。』

学生の立場からすれば、いやいや、そこまで聞いてませんよ!という感じでしょうか。『患者さんの評価項目を挙げてきて』という一言の中に、多くの意味が含まれております!笑。
私が書いてきてほしいなーと考える例文が以下になります。カルテからしっかりと情報収集をして、以下のような形で提出がお勧めです。あくまでも一例ですよ!このような感じという部分を感じ取ってください。

 

理想的な評価項目列挙の一例

◯月×日
【病態・入院理由】
本患者は、~月~日に喋りづらさと左片麻痺を生じ救急搬送されアテローム血栓性脳梗塞もしくは心原性塞栓症の診断で入院となった。幸い症状発現から治療開始までが早く、t-PA治療を行えたものの、左片麻痺は残存しリハビリテーションが開始となった。各種検査により、心原性塞栓症よりもアテローム血栓性脳梗塞が疑わしいことが判明し、抗血小板薬にて治療を開始している。治療開始後は明らかな増悪無く経過している。

当たり前なのですが、なぜその患者さんが入院してリハビリをしなければいけなくなったのか、しっかりとカルテから情報収集をしましょう。医師が行った治療内容にも言及できるとなおGood!
【リスク】
急性期の段階にあり、血圧自動調節能が破綻している可能性が高く、ペナンブラを守るという観点からも理学療法評価の際など、大きな血圧低下が無いか確認していく。特にアテローム血栓性脳梗塞であり、頸動脈エコー検査から動脈閉塞も確認されていることから、十分な注意が必要と考える。

脳梗塞の場合には、病型により留意する点が変わってきます。それぞれについてのリスクについて言及されていると、スーパーバイザーは、よく分かっていると評価してくれると思います。
【行う評価項目】
1日目
バイタルサイン:安静時の血圧・脈拍・SpO2など基本的な生命徴候を確認する。
意識障害:Japan Coma Scaleにてチェックする。
コミュニケーション:優位半球損傷であり、カルテからも失語疑いがあるため評価・治療を円滑に進めるためにも確認をしておく。
高次脳機能障害:コミュニケーションの確認や各種検査のやりとりからスクリーニング的に実施
ROM:カルテから変形性膝関節症の既往があることが確認できるため、膝関節はしっかりと確認したい。
筋緊張:麻痺側に問題になるような亢進・弛緩があるかどうかの確認を行う。もし問題があれば、Ashworthのスケールにて段階付を行う。
疼痛:ROM同様に膝OAの影響について確認する。疼痛の程度はVAS(もしくはNRS)にて確認する。
随意性:左片麻痺の程度をBr.stageを利用して確認する。検査をスムースに実施するため、背臥位姿勢のまま分離運動の程度を確認する。
反射検査:深部腱反射と病的反射の確認を行う。

2日目
感覚検査:触覚、深部感覚、温痛覚について確認を行う。
基本動作の確認を行う。寝返り、起き上がり、座位保持、移乗動作、起立・歩行についてどの程度の介助を要するのかを確認する。起立・歩行については、平行棒内から開始し

3日目
総合評価スケールSIASなど。評価予備日。

事前に、評価にどの程度の時間をかけられるかスーパーバイザーに確認をして、それぞれの日に何をやるか分けて書くと良いと思います。

 

上記のような形をとると、分かりやすいと思います。

 

情報収集の重要性

ここで、強調したいのは、理学療法評価をするまでの情報収集の過程が大変に重要であるということです。

理学療法学生でありがちなのは、リスク管理を飛ばして理学療法評価を開始することです。”転倒”というリスクについて言及してくる学生は大変に多いです。これは、脳卒中であるのであれば、言ってしまえば当たり前です。

それよりも、脳卒中であれば、その病態に応じたリスクについて言及してくることのほうが重要です。どのような病態なのか、医師はどう考えて治療を行っているのかを理解できれば、自然と理学療法評価の質も上がってきます。

もちろん臨床実習の場ですから、ハイリスク患者を学生のケースとしてスーパーバイザーが選択することは、おそらくほとんどありません。しかし、実際に国家試験に合格し働き始めれば、僕達が患者さんを選ぶことはもちろんできません。

そうなってくると、目の前の患者さんがハイリスクなのか、それとも積極的にどんどんリハビリができそうなのかその部分の評価は絶対に欠かすことができません。

プロフェッショナルとして、想定できるリスクについては、必ず事前に頭に入れた上で理学療法を実施する必要があります。現場では、本当に何があるか分かりませんよ。
理学療法評価を行って良い状態なのかどうかなのか?どの程度の運動負荷までなら耐えられそうなのか?
また、脳卒中片麻痺だからコレ!と画一的に選択するのでは無く、事前の情報収集の結果から、どのような評価スケールを用いればこの患者さんの変化を捉えることが出来るのかを考えられると、より良いですね。

そもそも、評価スケールというのは、本当にものすごい数があります。知られていないだけで、しっかりとValidationされているものも少なくありません。脳卒中ガイドライン2015や、日本理学療法士協会が作成した、理学療法診療ガイドラインを読んでみてください。

ちなみに、脳卒中患者さんで重要になってくる歩行評価については、私の以下の記事も参考にしていただけると幸いです。

脳卒中患者の歩行予後予測について

2017.04.23

【評価】エモリー機能的歩行能力評価(Emory functional ambulation profile: EFAP)について

2017.04.01

【評価】10m歩行テスト(10m Walking Test;10MWT)について

2017.02.24

【評価】Functional Ambulation Categories(FAC)について

2017.02.14

【評価】6分間歩行試験(6 Minute Walk Test;6MWT)について

2017.02.26

 

 

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