理学療法実習レポート書き方-統合と解釈-

 

理学療法士の免許をとって早いもので◯年。臨床実習指導者として何人も学生を担当してきました。私自身も大変に苦手でしたが、今の時代の学生さんも、やはりレポートをまとめる事が苦手なようです。

特に、『統合と解釈』と『考察』については、書き方が分からないと悩む学生、何だか見当違いな事を書いているような学生が少なくないので、私の経験から少しアドバイスさせてください。

 

※この記事は、図などが大きくわかりやすくなりますので、PCから見ることをお勧めします。もちろんスマホからでもOKです。

 

レポート作成はなぜ大変なのか?

これは、まず結論から言いますと、学校教育でほとんど指導されないためです。私もこのレポート作成については十分な教育を受けた覚えがありません。教えてもらっていないのに、いきなり実習に行って患者さんを担当して、スーパーバイザーが期待するレベルで書かなければいけないわけですから、それは大変でしょう。

でも、やっぱり実習を良い成績で乗り越えようと思うと、これは避けては通れません。なぜならば、スーパーバイザーは、臨床実習で学生の皆さんを指導する時に、レポート内の統合と解釈、考察を非常に重要視しているからです。

特に統合と解釈は、理学療法士になるために、臨床実習で身につけなければならない、最も大切なことと言っても過言では無いと考えています。一回、わかってしまえば本当になんてことない概念(ただし、本当に自分の解釈があっているかどうかについては簡単ではありませんよ)なのですが、ここを理解できない学生も少なくありません。

 

『統合と解釈』と『考察』の違い

大切なことは『統合と解釈』と『考察』は別物であると認識することです。

統合と解釈と考察をまとめて書いてくる学生がいますが、私が担当する学生には分けて書くべきであると指導しています。まず統合と解釈が何かということが非常に重要でして、初めに定義を確認しましょう。

個人的には、西守らの定義がしっくり来ますので以下に紹介します。

統合と解釈とは、患者の動作能力のレベルと検査結果との因果関係を結びつける作業である。

西守隆、大工谷新一.評価における統合と解釈.関西理学4:37-41.2004

 

これ、そのものズバリです。統合と解釈とは、このことです。この検査結果と動作能力を結びつける視点が、ひじょーーーーーーーーに重要です。考察については、記事が長くなるので、以下を参考にいていただけると助かります。

 

理学療法臨床実習レポートにおける考察の書き方について(初期評価編)

2017.02.08

理学療法臨床実習レポートにおける考察の書き方(中間・最終評価遍)

2017.02.10

 

まず、ICFの、障害構造分類の表をよく見ましょう。

これは、学校でしっかりと学習していると思いますので説明は不要ですよね。

担当患者さんの評価をした際に、検査・測定に”異常値”というものが出てきますね。例えば、膝OAで人工膝関節置換術を行ったとして、術後膝関節伸展筋の筋力が3、関節可動域であれば、膝関節屈曲が85°とか、いわゆる正常でない値が出てきます。そして、例えば、歩行をFIMで評価したとした時に、7点満点中4点の最小介助であったとしましょう。

じゃあ、膝伸展筋力が4で膝屈曲が100°だったから、歩行が最小介助になっているのでしょうか?この原因を、自分の評価の結果をよく見て考えるのです。どうして、この人の歩行は4点なのか?

検査・測定して、心身機能・身体構造に異常値があったとしても、どの心身機能・身体構造の異常が患者さんの基本動作やADLに影響を与えているかは、分かりにくいものです。特に、臨床経験が少ない学生の間は、なおさらです。

ひとつの機能障害が、多くの動作能力障害に関わっていることもあるでしょうし、複数の機能障害が、1つの動作能力障害を引き起こしている可能性だってあります。もしかしたら、動作能力の低下は、心身機能・身体構造領域には、原因が無いことだって考えられます。

もちろん、動作障害の原因が1つでないこともあるでしょう。そうであるならば、複数考えられる機能障害の中で何が最も動作に影響を与えているかという優先順位を考えた上で、治療に反映させる必要があります。なにせ、1人の患者さんにかけられる治療時間は限られていますから、そこがぼやけたままでは治療効果を最大化させることは難しいでしょう。

まず、ちゃんとやっつける(解決する)相手(問題)を、しっかりと、見定めましょう。

 

過去に、統合と解釈が全く出来ていない学生がおりました。脚色しており事実とは異なりますが、例として以下に出します。

 

統合と解釈ができていない一例

高齢なAさんという患者さんがいました。もともと、過去に脳卒中を患い、片麻痺が後遺したものの、IADLの範囲までほぼ自立した生活が可能であった方です。この方の今回の入院、とある内臓器疾患でした。入院後に手術加療をし自宅退院へ向け、術後にリハ依頼が出たのです。

術後の疼痛や高齢でもありましたので全身的なdeconditioningによる歩行困難感とADL障害がありました。この方を学生に担当させました。

一連の理学療法評価を行わせ、フィードバックする中で、『この患者さんが十分に歩けないのはどうしてだと思う?』と尋ねると、

『検査すると片麻痺がありますので、そのせいだと思います!』と、自信満々に答えました。

学生にありがちなちょっとオドオドした感じでは無く自信満々にですよ(^_^;)

これが、検査・測定だけ出来て統合と解釈が全く出来ていない例です。確かに、Br.stageで評価すれば麻痺が確認できるでしょう、でも、その麻痺はAさんを歩けなくさせるほどの悪さをしていたのでしょうか?どうしてAさんは歩けなくなっていたのでしょうか?

過去の脳卒中を患った時から、麻痺は後遺していたのですよ。それでも、生活は自立していました。もちろん入院後に麻痺の悪化はありません。じゃあ、どうして十分に歩けなかったのでしょうか?

それを考えることが、統合と解釈ですよね。

この学生の指導が大変だったことは言うまでもありません・・・。

 

このように検査結果単独だけを見ていては、それが動作能力に影響を与えているか判断ができないのです。

 

どうして目的とする動作が出来ないのか?これを自分の評価結果に原因を探ることが統合と解釈です!柔軟な思考で評価結果を見渡してください。上記学生のような、動けない=麻痺のせい、みたいな凝り固まった考えは捨てましょう!

 

以下に、急性期病院に勤める私が考える、統合と解釈を片麻痺患者を例にして、記載してみます。それぞれ、塊ごとに重要点を記載していきますので、参考にしてもらえると良いと思います。

ちなみに、おおまかな枠組みを捉えやすくするために、適当な架空の症例でありますので、実際の病変と症状に整合性が無い点などを、ご了承ください。

 

統合と解釈の一例

本症例は、心原性脳塞栓症により、右中大脳動脈(以下、MCA)領域に脳梗塞を生じ、左片麻痺、左側感覚障害、左半側空間無視、注意障害疑いを呈した70歳男性である。

※まず、大まかに、症例全体の様子を、冒頭で伝えることが大切です。この1文で、読者(臨床実習指導者や学校の先生ですね)は、この患者さんの事を、ある程度想像できます。

呼んでもらう人に、自分が担当した患者さんを想像してもらうために、必ず入れるべきものは、病名・性別・年齢・障害状況、これを入れるだけで、読む人は、グッと、その患者さんの事を想像しやすくなります。

脳卒中であれば、もう一つ大切なのは、脳梗塞の臨床病型や梗塞部位の責任血管を分かる範囲で、しっかりと記載しておくことです。どういうことかと言うと、脳梗塞であれば、ただ単純に『脳梗塞』と書くのでは無くて、ラクナ梗塞なのか、アテローム血栓性脳梗塞なのか、心原性脳塞栓症なのか、はたまたBAD(Branch atheromatous disease)なのかを、はっきりさせておきましょう。

急性期場面では、臨床病型の違いにより、リスク管理が、ガラッと変わって来るので絶対に医師の記録から情報収集しておいてください。

単純なラクナ梗塞であれば、離床が制限されることはほとんどありません。逆に、心原性塞栓症であれば、心機能の評価結果の情報収集が絶対に必要で、離床そのものをしっかりと検討する必要があります。危険な不整脈がないかなどもしっかりとチェックしておきましょう。

アテローム血栓性脳梗塞では、主幹動脈の狭窄の程度について医師カルテやエコー結果から確認しましょう。もし高度狭窄という結果であれば、血圧低下によって血行力学的な脳梗塞を生じる可能性がありますので、初期評価の際には、こまめな血圧測定が必要となるでしょう。画像上、分水嶺の梗塞となってる症例は特に注意です!

BADは、穿通枝の根元が詰まる脳梗塞で、なんと入院して治療をしているにも関わらず症状が悪化してしまいます!!!めちゃくちゃ怖いです!患者さんも、入院して治療しているのに悪くなるので不安やもしかしたら医師への不信感などがあるかもしれません。Dr.も気を付けて事前説明しています。発症後5日くらいまでは、要注意。あまり無いと思いますが、BADの患者さんを担当する場合には、スーパーバイザーとよく相談してください。

 

この症例に対する今回の理学療法評価から、機能障害として、認知機能低下、左片麻痺、下肢表在・深部感覚中等度障害、左上下肢筋力低下、体幹機能低下、両膝関節可動域制限、左半側空間無視が確認された。能力障害として、起居動作能力低下、座位能力低下、歩行能力低下、ADL能力低下(トイレ動作、階段昇降、更衣動作、入浴動作)が挙げられ、さらに参加制約として、活動範囲狭小化、自宅復帰困難などが挙げられた。

※自分が行った理学療法の検査・測定から、一体何がわかったのかを、まずまとめて記載してみましょう。とりあえず、ここで記載するのは、ICIDHにおける、Impairment、disability、handicapの3つの結果、特にImpairmentとdisability中心で良いと思います。もちろん、個人因子や環境因子なども必要ですが、後でまとめて記載します。

*参加制約については、担当する患者さんの病期により、統合と解釈内での扱いが大きく異なってくると思います。もちろん最終的に改善させたい部分はココなのです。・・・が、急性期の時点で、今後回復期リハに行くことが決まっているような患者さんでは、参加制約は少々遠い未来の事(患者さんが今困っているのは、病院内における生活)です。

そうなると、急性期では一旦参加の部分を頭の外において、運動機能と病棟のADL改善にフォーカスして、集中的に機能改善につながるような訓練を行っても良いと考えます。もし、直接自宅退院を目指すような症例であれば、しっかりと検討すべき項目です。

それぞれ詳細を確認すると、機能障害について、認知機能はHDS-Rにて21点、麻痺側運動機能は、Br.stageにてⅡ-Ⅰ-Ⅱ、感覚障害としては、表在感覚・深部感覚ともに中等度鈍麻、左上下肢の筋力はMMTで測定すると上肢近位が1レベル、上肢遠位が0レベル、下肢近位が2レベル、下肢遠位が0レベルであった。

体幹機能は、SIASの垂直性と腹筋力のテストにおいてともに1点であった。関節可動域制限については、左右膝関節の軽度内反変形、-5°の伸展制限を認めた。左半側空間無視については、SIASの検査にて0点(右に12㎝ずれ)、線分二等分線試験でも明らかに右偏位を認めた。

能力障害について、寝返りや起き上がりと行った起居動作は、ABMS2(Ability for Basic Movement Scale)において20点、バランス能力はFBSで26点、歩行は膝装具と短下肢装具を装着して平行棒内3動作揃い型にて中等度介助レベル、Functional Ambulation Classificationで分類すると 1、ADLはFIMを利用すると50点であった。

※自分が検査測定した結果の詳細をそれぞれ記載していきましょう。使用する評価項目は学校で習ったものでよいです。もし、実習地で勧められるものがあれば、それを利用するとスーパーバイザーとのコミュニケーションも図りやすいので良いかと思います。

主訴は、歩けないことである。自宅が昔ながらの和式建築物であり段差が多いこと、また同居家族である高齢の妻は、歩けるようにならないと自宅で介護をすることは難しいと家族は考えている。入院前の生活を確認した所、もともと農家として働いておりIADLまで自立していた。

※そして、このあたりでその人の個人因子や環境因子を入れてみてはどうでしょうか?この情報は非常に重要で後の問題点抽出・目標・PTプログラム作成にあたって不可欠になります。

ここで、本人の主訴にもある歩行困難について検査結果から検討してみる。歩行介助や観察から、麻痺側立脚期の支持性が乏しく装具がない状態では、立脚時に膝折れが起きていることが分かる。また、麻痺側振り出しに関しても、股関節屈筋の筋力低下や足尖の引っかかりなどから、自力での振り出しは困難となっていることが観察できる。

さらには左側からの声かけに反応が乏しい、注意が転導しやすく十分に歩行動作に集中できていない様子も見受けられる。

下肢の麻痺がBr.stageⅡと重度麻痺であることを考えると、膝折れや振出困難という現象が確認できることは妥当であると考える。さらには、感覚障害や、左半側空間無視・注意障害疑いといった点が、自立歩行をより一層困難なにしている原因であろう。

起立動作についても、麻痺側足底接地なく、足関節が内反している状態で起立しようとする場面が見受けられる。なぜこうなるかを考えてみると、やはりこちらも下肢麻痺や感覚障害、自身の身体や空間への認知が出来ていない影響が大きそうである。

起居動作障害については、寝返り時の頭部挙上保持が困難、麻痺側上肢管理が出来ない、上半身のみ先行し寝返るだけで骨盤が付いてこない、麻痺側膝立て困難、on elbow肢位まで体幹を起こしてくることが出来ないといった現象が見て取れる。検査・測定結果を振り返ると麻痺側上下肢の随意性低下、感覚障害、体幹機能低下といったものが強く関与していると考える。

ADL障害について、食事動作は利き手の機能は比較的良好に残存しており、セッティングすれば、時々声掛け程度で可能である。トイレ動作は、移乗、下衣着脱、清拭すべて介助の状態である。清拭の際に安定して姿勢を保つだけの動的座位バランスが不良であること、下肢麻痺の影響から下衣操作中に立位保持を保っていることが困難、また起立困難感から移乗が困難なことも影響している。整容については、上肢麻痺や半側空間無視の影響、更衣・入浴などは現在看護師全介助で行っている状況ではあるが、やはり下肢麻痺から移動が困難であることや、上肢麻痺により十分に衣服操作などが出来ないことも問題である。

 

※実際に、その患者さんが出来ない動作(特に本人が困っていると感じている動作)に関して、どうして出来ないのかを自分の検査・測定結果から考えてみましょう。大切なのは、自分の検査・測定結果から、考えるということです。

このような長い文章を書いていると、ついつい思い込みから原因を考えてしまうことを学生のみなさんは良くやりがちです。でもそれではいけません。しっかりと、自分が検査・測定した結果を振り返りながら、自分が考えた事が自分の評価結果と合っているのか考えましょう。

もし動作困難な原因を、自身の検査・測定結果と結びつけることが難しい時は、検査・測定を確実に行えていない、または追加で評価を行わなければならない障害について見落としているなどが考えられます。

そして、それぞれの動作が困難になっている理由を考えていると、複数の動作に重複して影響を与える機能障害が明らかになることが多いです。上記であれば、やはり、下肢麻痺は多くの動作に影響を与えていることが分かり、逆に膝関節可動域制限はほとんどの動作に影響を与えていないことが分かるでしょう。

必ずしも、全てを網羅的に文章にする必要はないかと思いますが、自分で図でも描きながら、どの機能障害とどの能力障害が関連しあっているかを確認してみるという作業が大切です。

そのように、それぞれ相互に絡み合って動作に影響を与えているという視点を身につけるのです。

そして、数ある要素の中でも、どれが一番悪さをしていてこの患者さんが動きにくくなっているのだろうと、複数の要素の中でも優先順位をつけることも重要です。私は学生には、A4用紙に機能障害と能力障害を箇条書きにさせて、どれが影響を与えているか線を引いてつながりを確認させるような指導を行っています。

統合と解釈から、症例の問題点をICFのチャートに合わせ、まとめてみる。

 

========以下、略=========

 

最終的には、簡単ですが、以下のような図が完成すればOKです。

 

宮崎哲哉.ICFに基づく評価の進め方と記録.PTジャーナル第39巻第10号.2005

 

私の経験からの意見なので、コレが正しいわけではありません。それぞれの実習指導者の考えもあるでしょう。ひとつの参考にしていただければ幸いです。

何を問題点として抽出するか・目標をどうするか・プログラムとして何を行うかに関しては、私は考察に書くようにさせています。

考察については、別記事にまとめてみました。

まとめ

統合と解釈とは、患者さんの動作能力低下の原因を自身の評価結果から考える過程です。そのためには、どうして出来ない?なぜ?と考え続けることが大切です。必ず自分の評価した結果から考えるようにしましょう。医師は絶対に思い込みで治療は行いません。診断がついてから治療をします。PTも、できるだけ相手の正体を明らかにしてから治療にとりかかりましょう。そのための、大切な大切な統合と解釈です。

以上、統合と解釈についてアドバイスになればと思い記載させて頂きました。

 

スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください