物理療法(温熱療法と電気刺激療法)のまとめ

 

去る1月下旬、東京での酒井医療の物理療法セミナーへ行ってまいりました。

非常に勉強になりましたので、私の中で理解が進んでいなかった物理療法について、ここにまとめさせて頂きたいと思います。時間は4時間ほど講義とデモンストレーションを交えた内容となっておりました。

参加費無料でしたが、おそらく理学療法士協会や民間のセミナー会社が講師を呼んで開催すれば1万円はくだらないのではないかという内容でした。全国各所で開催されており、無料となっております。

 

物理療法って何?

物理エネルギーにより生体反応を導き対象者の治療に応用することです。物理療法のメリットは薬剤や侵襲的治療(手術など)と違い安全性が高くリスクが低いことです。

ここで大切なのは、あくまでも物理療法は生体反応を導くということです。物理療法の刺激そのものが治療してくれるわけではなく、その刺激から導かれた生体反応が身体を治癒方向へ持っていってくれるという、この概念が非常に重要です。

 

また、当たり前なのですが、いくらすごい物理療法機器があったとしても(機器そのものは本当にすごい時代になっています)、それを利用する人の知識・技術が無いと効果を発揮することは困難です。

 

重要なのは、以下です。

 

正しい鑑別

適切な物理療法エネルギーの選択(温熱なのか電気なのか)

治療時の姿勢

効果的なトレーニングの指導

どれがかけても改善に向けた介入として不十分な効果で終わってしまいます。

昔から言いますよね。運動療法と物理療法は理学療法の両輪だって。長らく運動療法優位の時代が続いていたと思いますが、いまこそ物理療法の価値を見直す時期だと感じます。

 

物理療法で何が出来るの?

物理療法では以下に示すような、実に多くの効果を期待できます。運動療法では不可能なことや、運動療法でも可能だが、物理療法に替えることで時間をものすごく短縮化出来たりするため、理学療法士としてはしっかりと覚えておきたいところです。

早期鎮痛

適切な物理療法を選択することで、ゲートコントロールセオリー(Melzack & Wall)、内因性オピオイドシステム、末梢神経伝達ブロック作用などを利用した疼痛緩和が可能になります。

具体的な治療としては、TENS、高電圧パルス電流療法(High Voltage Pulsed Current;Hi-Volt)干渉波電流療法(Interferential Current;IF)などの電気療法、超音波(Ultrasound;US)ラジオ波(radiowave;RF)などの温熱療法、超難治性慢性疼痛には衝撃波があります。

深部への温熱作用

適切な物理療法機器の利用により生体深部まで温熱刺激を加えることが可能です。生体表面のごく浅い部分を温めるのであれば、ホットパックや温泉などで十分ですが、深部への温熱刺激となると、適切な機器が必要です。代表的なデバイスとして、超音波(深さ6cmまで)、超短波(深さ8cmまで)、ラジオ波(電極で挟んだ範囲全て!すごく広い範囲)があります。

組織修復

生体が刺激を感じることが出来ない程度の微弱電流療法(Microcurrent Electrical Stimulation;MENS)を利用することで細胞レベルで組織修復を期待できます。また、超音波療法にも組織修復作用があります。既に骨折治癒のために保険診療で広く利用されています。

 

筋肥大、筋力低下・廃用性筋萎縮予防

電気刺激を利用することで筋収縮を促し筋肥大や筋力低下予防に活かすことが出来ます。EMSです。臨床でも、脳卒中・頭部外傷で意識障害が生じている患者に利用された報告があります*。第7病日から1週間の利用で1%の筋萎縮にとどめることができ、第7病日~第42病日までの約1ヶ月の利用でわずか10%の萎縮(90%残存)にとどめることが出来たそうです。

* 野口 和男(大阪大学医学部附属病院高度救命救急センター)ら.『電気的筋肉刺激による意識障害患者の下肢筋肉萎縮予防効果(会議録)』

現在の物理療法の核は温熱療法と電気刺激療法

上記のように、圧倒的に電流と温熱の出番が多いです。この基本の2つを押さえましょう。

電気刺激療法

電気刺激療法により期待できる生体作用は以下のとおりです。

鎮痛、機能改善、組織修復、血流循環増大、浮腫軽減(Hi-Volt のみ)です。

電気刺激療法の効果的に利用するために覚えることは、周波数設定をどうするか?

これに尽きます。これが電流療法で最も大切なことです。大事なのでもう一度言います。

電気刺激療法で大切なのは周波数の設定です。

周波数とは?

周波数は、1秒間に何回電気の刺激を与えるかということです。1Hzであれば、1秒間に1回刺激を加えます。10Hzなら1秒間に10回です。おもしろいのは、周波数が異なれば異なった生体反応が得られるということです。

周波数を少し整理してみましょう。

1000Hz以下:低周波

1秒間の刺激が1000回以下の電気刺激を低周波と呼びます。これには、TENS、MENSなどが含まれます。

1001~10000Hz:中周波

1秒間の刺激が1001~10000回の電気刺激を中周波と呼びます。干渉波などが含まれます。

10001Hz以上:高周波

1秒間の刺激が10000回以上の電気刺激を高周波と呼びます。ここまで刺激回数が多くなってくると、もはや電気治療とは呼べなくなります。驚くことに周波数を高くすると電気刺激療法から温熱療法に変わるのです!

ちなみにラジオ波は3万Hz~3億Hzまでの周波領域のことを指します。1秒間に3億回の刺激とは、もはや意味不明です笑。

 

ヒトの神経が反応してくれるのは、低周波のみです。あまり周波数が高すぎると刺激が頻回すぎて神経は反応できなくなってしまします。

 

効果的に電気刺激療法を行うために

みなさん、学生時代の物量の授業で経験があると思うのですが、単純に周波数を挙げていくと同時に痛みが増してきます。クラスメート同士でやりましたよね。なぜか電気に敏感な人がいてその反応を見て楽しみませんでしたか?これPTあるあるだと思うのですが。

 

周波数を高くするとそれだけ皮膚抵抗も増えてしまうので、同時に痛み刺激が表出されてしまうのです。これが低周波治療の弱点でもあります。

そしてこの不快刺激を避けるために皮膚抵抗を下げる3つの方法があります。

電圧をあげること、周波数を高くすること、パルス幅を短くすることです。パルス幅は”刺激の加わっている時間”です。

電圧を上げることと、パルス幅を短くすることを組み合わせたものが、高電圧パルス電流療法(Hi-Volt)です。

周波数を上げることと、パルス幅を短くすることを組み合わせたものが、干渉波電流療法(IF)になります。

どちらも、皮膚抵抗を小さくし不快刺激を少なくし深部まで電流刺激を到達させることが出来ます。

 

ちなみに、干渉波のカップってみなさんどういう風に装着します?

このやって患部を4つのカップで挟んで、その真ん中に治療効果があると思っていませんか?

私はそう思っていました。学校でそう習ったからかな?

でも、これ、間違ってますので!!!

なんと、4つのカップの中心に干渉波治療効果は全くありません!!!意味ないです!!!!

私は不勉強でお恥ずかしいのですが、ずっとこうやっていました(-_-;)

干渉波の電界が発生するのは、周波数の異なる2つのカップの間の領域だけです。その干渉範囲は広くても握り拳1つ分です。それ以上広げると干渉しません。ちなみに4個である必要は全くありません。2個で十分です。

先ほど、大事なのは周波数と言いました。干渉波で何をしたいのかが大切です。急性疼痛を取りたいのか、慢性痛をとりたいのか。その目的によって効果的な周波数は異なります。

例えば、カップAは3000Hz、カップBは3100Hzとすれば、それらが干渉しあって100Hzの低周波刺激を加えることができます。カップAが3000Hz、カップBが3010Hzなら10Hzの低周波刺激を入れることが出来ます。

狙った場所に、狙った周波数の刺激を入れる。この意識を持つようにしましょう。

 

電気刺激療法の周波数設定

ここは、本当に大事な部分ですのでしっかりと覚えてください。覚えるのはコレだけとも言えます。

急性期疼痛に対する刺激設定

Aδ fiberを伝達される損傷直後や急性の痛みに対しては、主にゲートコントロール理論を応用し、Aβ fiberに刺激を加えます。

周波数:100~200Hz、パルス幅:10~20μsec、刺激時間:10分以上、強度:反応閾値前後(筋肉が動くか動かないかのギリギリのところ)です。

慢性疼痛に対する刺激設定

C fiberを伝達される慢性痛に対しては、神経興奮抑制や内因性オピオイドシステムを利用した除痛を期待します。

周波数:1~30Hz、パルス幅:50~100μsec(Hi-voltはmaxで50μsec)、刺激時間:10分以上(10分で神経興奮抑制による鎮痛効果、20~30分で内因性オピオイドシステムが活性化)刺激強度:反応閾値以下(弱め;筋収縮が出ない)です。

EMSとして利用する場合の周波数

周波数:30~80Hz、パルス幅:200~300μsec、刺激時間:1日20分を4~6週間(という研究が多い)、刺激強度:疼痛や不快感のない最大強度、オン/オフ時間:1対3(オンが5秒間、オフが15秒間のように)という報告が多い。

 

電流療法の基本周波数
急性期(Aδ fiber):100~200hz
慢性期(C fiber)  :1~30Hz
筋肉刺激:30~80Hz

 

温熱療法

温熱療法に期待できる生体作用は5つあります。

鎮痛、筋緊張緩和、結合組織の粘弾性改善、血液・リンパ液流の改善、精神的ストレス軽減、組織修復、です。

電気刺激療法で周波数が大切だったように、温熱療法でも大切なことがあります。

温熱療法を効果的に利用するために重要なことは、組織温度を何度まで上げるか?ということです。

大切なのでもう一度、言います。何度まで組織温度を上げるつもりでその温熱療法を行っているかということです。

 

温度上昇が及ぼす生理的変化と臨床効果

36℃程度を基準として考えた時に、

+1℃
生理的変化

血流を増加させ、各組織の代謝を促進します。

臨床的意味

慢性炎症を軽快させ筋肉スパズムを減少させます。

+2℃
生理的変化

運動及び知覚神経の伝達速度を増し、疼痛閾値を高めます。骨格筋の金蝶を和らげます。筋紡錘の緊張を和らげます。筋肉スパズムを減少させます。

臨床的意味

疼痛を軽減します。筋肉スパズムを和らげます。

+3~4℃
 生理的変化

建・関節嚢・および瘢痕組織のコラーゲン伸展性改善。

筋膜間のヒアルロン酸凝集を解きます。

 臨床的意味

深部筋膜滑走不全を改善できます。

ROMを改善させます。

超音波療法について

超音波治療は、高周波温熱療法の1つです。ホットパックや温泉などの伝導加温でなく、立体加温であり、温熱作用と非温熱作用の2つを持つことが特徴です。

急性期には主に非温熱作用、慢性期には主に温熱作用を利用することで、利用場面を問わず使うことが出来ます。

超音波療法の周波数特性

周波数が大きくなるほど、吸収係数が正比例的に増加します。そのために周波数が高くなれば、浅層組織にエネルギーが吸収され、深部到達しにくくなります。逆に周波数が小さいと深部到達しやすくなります。

1MHzで約6㎝まで、3MHzで約2㎝まで到達します。

もし自分の治療対象部位が浅層にあれば3MHzの方が効果的な治療が可能です。深部にあれば、1MHzを選択してください。

超音波の作用

立体加温とミクロマッサージの2つの作用があります。

急性期では主にミクロマッサージ作用を期待し、DUTYを10-30%程度で使用し、慢性になってくると温熱作用を期待しDUTY 100%で利用します。

温熱作用を期待して利用する場合、1MHzよりも3MHzの方が組織温度を上昇させることが出来ます。Draperら(*)によると、下腿三頭筋の筋温は、1MHzかつ1W/cm 2 で毎分0.16℃上昇し、3MHzかつ1W/cm 2 で毎分0.58℃上昇します。

 

超音波療法の留意点(安全管理)

ビーム不均等率(BNR;Beam non-uniformity ratio)とERA(effective radiation area)の2つがひじょーーーに重要です。

BNR

BNRとは超音波の平均強度(W/cm2)に対する最大強度のことを指します。この数値が大きいと患者さんに害を与える可能性が大きくなるため注意が必要となります。この平均に対する最大強度が小さいほど安全な機器であると判断できます。もちろん1:1なんて機器は世界中探してもありません。以下にこの最大強度の数値を小さくするかが物理療法メーカーの腕の見せどころだそうです。

ちなみに酒井医療の超音波治療器のBNRは1(平均強度):2.3(最大強度)であり、世界で3本の指に入るそうです。

ERA

ERAとは、同士面積のうち発振している面積のことで、導子の全面積に対する割合(%)で表されます。こちらは、現在作られている機器であればほぼ変わりはないそうです。

超音波療法留意点(使用方法)

導子の移動方法についていくつか留意点があります。

 

治療面積:治療範囲は導子面積の1.5倍以内(皮膚表面を撫でるのでなく、少し組織に押し付けてその状態で動かす)

移動方向:筋繊維にできるだけ直角に(吸収係数が3.3倍になります)

筋繊維にできるだけ平行に(級数係数が1.3倍になります)

関節の場合は導子を固定して関節をゆっくりと動かしていきます。

移動速度:出来るだけゆっくりと(ワンストローク;治療範囲の端から端まで 1秒程度)ここにはエビデンスなし(*)

ちなみに、昔の超音波機器はBNRが大きいために患部に直接固定して利用することが出来ませんでした。例えば、BNR1:6という機器があったとして、患者さんに2W/cm 2で照射しているとすると、一部組織は、12W/cm2の刺激を受ける可能性があるということで、組織損傷などの可能性があるためです。しかし、最近は固定法が主流となっているそうです。

導子の移動速度に関して、Weaverらによると、1~2cm / secの移動速度が推奨されているが、2~3cm / secでも、 4~5 cm / secでも、7~8 cm / sec でも同様の組織温上昇を得たという結果があり、組織温上昇には導子の移動速度は関係なかったそうです。

ラジオ波について

聞いたこと無い方もいると思います。高周波温熱治療器です。酒井医療さんのラジオ波機器

ラジオ波の特性

広い範囲に立体加温が可能。超音波はごく一部の範囲に立体加温。

加温が早く心地よい。

治療効果が持続する。残温効果が非常に高い。

ハンドセラピーを行いながら照射可能。

関節内部へエネルギーが入れやすい(骨への影響も少なく効率が良い)。

ストレッチや筋収縮といった抵抗を利用した治療が可能。

このラジオ波、すごいです。さっきの超音波治療器なら深部組織温度を上昇させるのに比較的時間が必要でした。数分とか10分とか。しかし、このラジオ波なら、たった10秒!で深部組織を40℃まで上昇させることが出来ます。もう意味が分かりません!短縮した筋腱複合部のストレッチングの前に、10秒ラジオ波、深部筋まで伸展性を改善させ、そこにストレッチング。運動器リハ1単位の価値が劇的に変わります。

本当に本当に時代は変わっています。これは、ぜひ参加して体験してみてください!

まとめ

現在の物理療法の核ともいうべき温熱療法と電気刺激療法について紹介しました。機器はすごく進化しています。適切に利用することで物理療法は患者さんを助けるために素敵なパートナーに、これからもっとなってくると思います。

 

【参考・引用文献】

酒井医療物理療法セミナー資料

庄本康治.最新物理療法の臨床適応.2012

*)Draper O,et al. Rate of temperature increase in human muscle during 1 MHz and 3 MHz continuous ultrasound. J Orthop Sports Phys Ther 22(4):142-150.1995.

*)Weaver L ,et al. Effect of transducer velocity on intermuscular temperature during a 1-MHz ultrasound treatment.J Orthop Sports Phys Ther 36(5):320-325.2006

 

 

 

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3 件のコメント

  • わかりやすくまとめてくださってありがとうございます。
    電気刺激療法について質問です。

    周波数を高くするとそれだけ皮膚抵抗も増えてしまうので、同時に痛み刺激が表出されてしまう。
    不快刺激を避けるために皮膚抵抗を下げる3つの方法として、
    電圧をあげること、周波数を高くすること、パルス幅を短くすることが挙げられています。

    周波数を上げた際の皮膚抵抗の異なる変化が2つ書いてあります。
    皮膚抵抗は上がるのでしょうか、下がるのでしょうか?

    • 竹内 さま

      周波数のみを挙げていくと、皮膚抵抗が増強し痛みが増しますので、電圧と上げたりパルス幅を短くして対応するものが記事内にありますが、Hi-Voltageや干渉波になります。
      詳しくは成書などをご覧頂くのが良いかと思います。

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