理学療法臨床実習について思うこと

 

理学療法士・作業療法士の臨床実習、避けては通れない茨の道であるということは皆さんご存知のとおりです。

私も、学生時代には辛い思いをしたものです。

もちろん、担当してくださったスーパーバイザーやその他のスタッフの方には本当にお世話になりました。そこは間違いない部分です。ただでさえ、普段の病院・施設業務で忙しい中に右も左も分からない学生を受け入れてくださって多忙になるわけですから、本当に申し訳なくありがたい気持ちになりました。

これは、学生時代だけでなく就職後新人の頃にも思いましたね。

理学療法実習8週間分の時間は、ものすごい可能性を秘めている

臨床実習は、1クール8週間前後である学校が多いと思うのですが、1日8時間程度は病院・施設に拘束されます。実際には、デイリーノートや症例レポートなどの課題がありますので、実質的には、拘束時間はもっと長いものとなるでしょう。

 

土日は休みだとして、8時間✕5日✕8週間=320時間!

 

320時間ですよ!?これすごい量ですよ。圧倒的な時間量です。

ちなみに、中学校の英語授業の総授業時間ってどの程度かご存知ですか?

約300時間です。中学校の英語の知識があれば日常生活で話す英語には困らないとよく言われますね。

あと不動産の業界で働くために必要となる、宅地建物取引士の資格取得に必要な総勉強時間が、やはり300時間程度と言われているそうです。

 

これを見ると臨床実習にすごい量の時間が割かれていることが分かりますね。

上記のようなスキルがあれば、他の業界でも働けるのでしょうが、そういった他の何者かになれるかもしれない可能性を切り捨てて、学生は理学療法士に向け厳しい臨床実習に臨んでいます。

 

でもね、理学療法の臨床実習ってスーパーバイザー次第で学習効果がびっくりするくらい変わる!

 

当たり前といえば、当たり前ですが学生の頃の経験と、指導者になってからの経験から強くそう思うようになりました。

 

見学は難しい学習方法

例えば、次のようなことは、よくあると思うのです。

 

『じゃあ、午後は他のスタッフの見学しておいてねー。』

 

自分も学生の頃に頻回に言われました。

私はもう何年も前から学生を指導する側に周りましたが、これを言いたくなる気持ちすごく分かります。だって、すごい楽なんです。実際に、疲れてる時には言ってしまいます。

学生に色々と説明しながら病院の中を連れて歩くのって結構疲れるんです。

ただ、この学習方法がとのくらい本人のためになっているかは未知数です。見学はかなり難しい学習方法です。ここで見学につかせてもらい学生をみるスタッフは、もちろん1~10まで手とり足とり担当患者さんのことを伝える時間はありません。

また、見学する患者さんの情報をある程度事前に入手していないと、本当に見ているだけで、担当理学療法士が何のために何を行っているかが分かりません。

そういった学習方法で1日の時間の半分が失われてしまうのは勿体無いですよね。

 

見学はある程度自分の中に経験が溜まっている場合には自分と他人のやり方を比較するということで、より有用な評価・治療へ展開させることが出来るかもしれません。しかし学生の段階では、ほとんど臨床経験が無いですので、効果が発揮されづらいと感じています。

偏差値が高いと言われる大学の学生も見てきましたが、見学が有用な学習方法だったと感じる学生には、残念ながら遭遇したことがありません。

もっとこちらから直接的にこちらから教えるという方法(いわゆるティーチングってやつですかね)の方が有用だと感じています。

特に、臨床実習1期目とかであれば一部分でも患者診療に参加してもらい、体を動かすのです。学校で詰め込まれた知識を実際の体の動きとリンクさせるのです。

ちょっと不躾な言い方ですが、臨床実習は学校で教わったことを患者さんで試させてもらう場です。

患者さんに試すというと聞こえが悪いですが、本質はそうです。

みなさん、もちろんこのような事は行っていると思いますがどのように参加してもらうかが重要だと感じています。

出来れば、ただ『この患者さんの下肢のMMTを測ってみて』では無くて、事前にカルテから患者情報を仕入れさせ、スーパーバイザーがどういった目的でその評価方法・治療を選択しているかということをしっかり学生に理解させた上で、検査・測定させる方が良いと感じています。そして、至らない点があれば可能な限りその場でフィードバックをかけること、これが大変重要です。

 

私も、はじめて臨床実習指導者を行った時には、学生がやっていることを見ていて、

『あ~、もうちょっとこうやった方がイイのにな、でも、今すぐ止めるほど危ないことをやっているわけでも無いしなー、後で伝えよう』なんて考えていました。

でもコレは脳科学的には全く良くない。本人に定着しない。

だって患者さんに対して理学療法行うときも一緒ですよね。

例えば、歩行練習している時、観察の結果何かしら修正の必要があると判断し患者さんに伝達するときには、その場ですぐにフィードバック与えますよね?

時間が経ってから、『 ◯◯さん、あの時もっとこうした方が良かったですよ 』なんて、全く非効率だということは理学療法士であれば誰にだってすぐに理解できることです。

学生指導も一緒です。出来るだけ、その場ですぐにフィードバックを与える(その場でフィードバック与えても結構できない学生多いですよ、ぜひ指導に当たっている若い先生たち試してみてください)

出来なければスーパーバイザーが変わって見本をみせる、そしてもう一度やってもらう。

ただし、学生のケースにしている患者さんで、コレをやってしまうと学生と患者さんの間の信頼関係に問題が生じるかもしれないので、そこの見極めなどはそれこそ臨床実習指導者が社会人としてちゃんと判断してあげてください。

患者さんには、『 リハビリの勉強に来ているので、学生がお手伝いなどさせてもらってもよろしいですか? 』などとお伝えし、許可をもらえれば、どんどん参加させてもらいましょう。担当患者でない方の検査・測定から始めると良いと思います。

 

学生を ”分かったつもり” にさせないために

私自身のことを振り返ってみると、業務終了後のフィードバックで教わったことって、かけてもらった時間の割にはあんまり覚えていません。

それよりも、患者さんを前にして、ROM exの時はこういうところに気をつけてとか、スーパーバイザーに見本を見せてもらったことは今でも、その情景を思い浮かべることが出来ます。

いかに患者さんから学んでいるかということを実感します。私自身、最近では、すっかりこの方法を定着させました。

なぜなら、口頭だけで伝えて分かったような反応をしている学生でも結局は分かっていない!ということを臨床実習指導者1年目にありありと実感したからです。

やっぱり、臨床実習指導者になるまでの3年間に色々と経験しましたので、ぜひ学生にも知ってほしい、分かって欲しいという気持ちがありました。そのために業務終了後のフィードバックでも時間たくさんかけました。

しかし、実習終了間際の最終評価レポートの解釈・考察を読むことで、伝えたことが全部ちゃんと伝わることなんて無いのだと、その時はっきりと気づきました。もちろん、私の伝え方・指導が至らないという点が大きく、決して学生が劣っていたという訳ではありません。それよりもやはり”教育”とは、いかに難しいことかということを痛感しました。

 

本当に一筋縄ではいかない、しっかりとこちら側に明確な意図・伝え方のような枠組みが無いと、相手に伝わりにくいのだと。伝えた、半分でも受け取ってくれれば本当に万々歳なのだと。

 

その学生からは、多くの時間を奪ってしまったことから、今では申し訳ない気持ちがあります。

 

最近では、レポート偏重の実習指導に色々と厳しい意見があります。私も、文章の言い回しや構成などについて多くの時間を割いて学生に修正を求めることは大反対です。どんなに学生が劣っていたとしても、そのような修正のフィードバックのためだけに、学生から時間を奪う権利は臨床実習指導者にはありません。

ただし、統合と解釈、考察など自身の考えを文字に起こしてもらうということは絶対に必要です。

最近は、レポートを作らずにA4 or A3 用紙1枚でケースの内容をまとめなさい、という課題を与えている学校もありますが、コレは学生のためにも本当に良くない。ちゃんと解釈や考察を少し長くなっても文章にして考えを文字に起こさせることは、最終的に学生のためです。

ココを抜かしてはいけない。ただし、上記のように評価結果の解釈や考察に対してフィードバックを与えるというよりも、いわゆる国語力を批判するようなスーパーバイザーが多く学生に過度なストレスが加わることが後を絶たず、学校もこのようにせざるを得ない部分もあるのでしょう。でも、それで良いのですか学校の先生よ!

自分がまとめたレポートに対してきちんとフィードバックをかけてもらうことほど、学生の能力評価を行う有効な方法はありません。医学生の臨床実習でも同様だそうです。

 

医学生の臨床実習について

 

assessment-clinical-skills          信州大学医学教育センター 多田 剛 先生のレポート

 

もちろん、レポートに自身の考えを全てキレイにまとめて表現できる国語力を持った学生は多くはないと思います。稀にいますが、結構珍しい存在ですよね。

 

そこで、レポートに表現できていないだけなのか、それとも理解が進んでいないのかをちゃんと対話で確認し、これからの課題や学習したほうが良いことを見つけてあげることは臨床実習指導者の力量です。

 

ただ、ひとつ問題は、EBP(Evidence-Based Physical therapy)についてちゃんと教えてもらってないから評価や治療の選択方法の考え方自体がスッポリ抜け落ちているので、本当に1から時間をかけて教えないといけないことや、統合と解釈の方法、レポートの構成方法などについても十分に学校で指導されておらず臨床実習指導者がそれを行わなければならないことです。

これらの事について、ある学校の臨床実習指導者会議で質問したことがありますが、その時の学校は、施設・指導者によって方法が異なるため、最低限の事しか伝えていないという回答でした。トホホ。

これでは、学生も困ってしまいますので、普段私が行っている具体的な統合と解釈や考察の構成方法などについて別記事にまとめられればと思います。

 

 

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