【評価】Scale for Contraversive Pushing(SCP)について

 

Scale for Contraversive Pushingについてまとめます。

目的

主に脳卒中患者にみられる、Pusher Behavior(PB)・プッシャー症候群の状態を評価します。

対象

Pusher behaviorを呈するのは、脳卒中片麻痺者です。

方法

A;姿勢、B;伸展と外転、C;修正への抵抗について、座位・立位姿勢それぞれにおいて観察し採点します。

点数が大きいほど重症と判断され、最重症は6点になります。

A 姿勢(静的保持の対称性) 座位 立位
Score 1     ;重度に麻痺側傾斜し転倒する
Score 0.75;重度に麻痺側傾斜する
Score 0.25;中等度に傾斜する
Score 0     ;正中位保持可能
Total(max=2点)
B 伸展(上下肢で接地面を押す)
Score 1   ;安静時から押す
Score 0.5;動作時にのみ押す
Score 0   ;押さない
Total(max=2点)
C 抵抗(他動的姿勢修正に対して抵抗する)
Score 1;抵抗する
Score 0;抵抗しない
Total(max=2点)

特性

検査方法 観察
必要時間 10分~20分
必要な機器 特別必要としない
必要なトレーニング なし
コスト 無料

カットオフ

A;姿勢、B;伸展と外転、C;修正への抵抗の3つの項目のサブスコアがそれぞれが1点以上あればPusher症候群があると理学療法診断ができます。(Baccini et al.2008)

上記表で示したように合計は6点満点になります。

これは本来大学の授業で教えるべき論文だと思うので内容について確認します。

以下がBacchiniらが検証した、SCPの点数と実際の臨床場面でのPusher behaviorの関係を表した表になります。

SCP 診断 臨床診断から区別された患者数
Negative Positive
基準1

Negative

Positive

40

48

0

17

基準2

Negative

Positive

86

2

0

17

基準3

Negative

Positive

88

0

6

11

Baccini M et al. Scale for contraversive pushing: cutoff scores for diagnosing “pusher behavior” and construct validity.2008より引用・改変

この表について説明していきます。

『臨床診断から区別された』というのは、実際の臨床場面で経験豊富な理学療法士が細心の注意を払って動作観察し、Pusher症候群がある(positive)か無い(negative)かを判断していることを示します。

そして、以下が基準1~3の詳細になります。

基準1:SCPの合計得点が>0であれば、Pusher症候群と診断する。

基準2:SCPのサブスコアそれぞれの得点が>0であれば、Pusher症候群と診断する。

基準3:SCPのサブスコアそれぞれが≧1であれば、Pusher症候群と診断する。

表の『基準1』のpositiveの行をみてください。臨床診断から区別された患者数のnegativeとpositiveとクロスしている部分をみると、”48”と”17”の数字が並んでいると思います。

SCP 診断 臨床診断から区別された患者数
Negative Positive
基準1

Negative

Positive

40

48

0

17

基準1:SCPの合計得点が>0であれば、Pusher症候群と診断する。

この基準1では、Pusherの患者さんが48+17人で合計65人いたことになります。

この65人を、経験豊富な理学療法士が実際に評価したとき、Pusher症候群だと判断されたのは17人。残りの48人はPusher症候群ではありませんでした。

つまり、基準1(合計得点>0点)を利用してPusher症候群があると判断した時に、実際にPusher症候群があった人は65人中17人しかいなかったということになります。

このように、実際にはPusher症候群が無いのに、そのテストを行うことで、間違って”Positive”と判断してしまうことを、偽陽性(false positive)といいます。

基準1でPusher症候群があると判断すると偽陽性率が高いことがわかりました。そのため、基準1を使ってPusherの有無を判別すると、実際にはPusherがない人をPusherがあると間違って判断してしまう可能性が高くなります

次に、基準3のNegativeの行を見てみてください。

SCP 診断 臨床診断から区別された患者数
Negative Positive
基準1

Negative

Positive

40

48

0

17

基準2

Negative

Positive

86

2

0

17

基準3

Negative

Positive

88

0

6

11

基準3:SCPのサブスコアそれぞれが≧1であれば、Pusher症候群と診断する。

基準3でPusher症候群がないと判断された人(それぞれのサブスコアが<1)の中に、実際にPTが観察してみるとPusher症候群があると判断された患者は6名いました。

実際にはPusher症候群があるのに、検査をして”Negative”と判断してしまうことを偽陰性(false negative)といいます。

実際にPusherがあるのに、無いと言ってしまうのも、良いことではありませんね。

このように、基準ひとつひとつについて見てみると、以下のようなひょうを作ることができます。

感度や特異度という見慣れない言葉が出てきましたが、”診断”という行為を考える上で欠かせない概念です。

厳密には、診断は医師にのみ許された特権行為となりますが、私達は病名をつけるわけではありません。理学療法的な診断であれば理学療法士が行っても何ら問題はないでしょう。

感度や特異度についてはまた別の機会に記事にします。

基準1 基準2 基準3
感度 1.000 1.000 0.647
特異度 0.455 0.977 1.000
陽性尤度比 1.833 44.053
陰性尤度比 0.000 0.000 0.353

Baccini M et al. Scale for contraversive pushing: cutoff scores for diagnosing “pusher behavior” and construct validity.2008より引用・改変

それぞれの基準における、感度、特異度、陽性尤度比(ようせいゆうどひ)、陰性尤度比が示されています。

この表により初めて理学療法士がSCPをどのように利用するべきなのかがわかります。

結論から申しあげますと、利用価値があるのは、基準2と基準3です。それぞれ異なる利用目的があります。

基準2は、Puseherが無い患者さんを判別する際に有効になります。

基準2でPusherが無い(negative)と判断された患者さんは、実際の理学療法士の注意深い観察によっても、PBは無いと判断されています。つまり、基準2で判断してPBが無いと判断されれば、本当にPBは無いとして良いということになります。

SCPのサブスコアが全て0点であることを確認できれば本当にPusherが無い

逆に、基準3は、PBがある患者さんを判別する際に大変有効になります。

基準3でPusher症候群がある(positive)と判断された患者の中に、実際の理学療法士の観察においてPusher症候群が無いと判断された患者は1人たりともいなかったのです。つまり、基準3でPBがある(positive)となれば、確実にPBが存在することになります。

つまり、

SCPのサブスコアそれぞれ1点以上であることを確認できればPusher症候群と診断できる。

感度や特異度よりも、実は尤度比のほうが非常に重要でして、ノモグラムを利用することで、その検査の重要性がわかります。

ノモグラムの使い方をご存じない方は、私の以下の記事の後半あたりを参照ください。

脳卒中患者の歩行予後予測について

2017.04.23

相関

脳卒中患者において、SCPは、ADL、バランス、移動能力と負の相関があることが確認されています。(Bicchini et al .2008)

相関係数
Barthel index Fugl-Meyer(Balance) LIND-MOB
SCP合計得点 -.632 -.666 -.595

まとめ

Pusher症候群が無いかどうかを知りたい時には、SCPのサブスコアが全て0点であることを確認しましょう。

Pusher症候群があるかどうかを知りたい時には、SCPのサブスコアが全て1点以上であることを確認しましょう。

SCPは移動、バランス、ADLと中等度~高度の負の相関関係があることが確かめられています。

References

The scale for contraversive pushing: A reliability and validity study.
Baccini M, Paci M, Rinaldi LA. Neurorehabil Neural Repair. 2006.

Scale for Contraversive Pushing: Cutoff Scores for Diagnosing “Pusher Behavior” and Construct Validity.
Baccini, Marco; Paci, Matteo; Nannetti, Luca; Biricolti, Claudia; Rinaldi, Lucio A. Physical Therapy.2008

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