脳卒中リハビリガイドラインupdate

 

どうも、アポロンです。脳卒中関連のガイドラインアップデートです。

脳卒中治療ガイドライン2015

昨年、脳卒中ガイドライン2015が出版されました。日本においては脳卒中ガイドライン2009から実に6年ぶりの改訂です。

詳細は、日本リハ医学会が出版しているニュースを参照してください。

 

海外においても昨年から今年にかけて脳卒中リハビリテーションに関するガイドライン更新が続いています。

今回紹介するガイドラインは以下の2つです。

 

Canadian stroke best practice recommendations : stroke rehabilitation practice guideline(CSBPR)

Canadian stroke best practice recommendations: Stroke rehabilitation practice guidelines, update 2015

Hebert D, Lindsay MP, McIntyre A et al. 2016.4.14.Int J Stroke.

(直接リンクは貼りませんでの、検索して原文確認してみてください。)

 

Canadian stroke best practice recommendations : stroke rehabilitation practice guideline(CSBPR)は、脳卒中診療に当たる全てのスタッフに最新のevidence-basedな “勧め“ を与える要約集であり、カナダにあるトロントリハビリテーション研究所の医師が中心となりまとめています。

定期的にアップデートされていますが、前回更新は2013年でしたので、2年ぶりですね。

主に2つの視点からrecommendationを提供しています。

1つは、Stroke care unitやチーム医療、脳卒中の初期診療といった”システムの部分”がどの程度効果があるかという点

2つ目は、上・下肢麻痺、歩行障害、嚥下障害、高次脳機能障害に対して何を行うことが勧められるかというより”具体的”な訓練についてです。

それぞれにはエビデンスの強さや質にサポートされたレベル付が(急性期と維持期2つの時点でのレベル付がされていることはCSBPRの特徴です)されており理解が進みやすいようになっています。

 

recommendationのレベル

Level A:RCTのメタアナリシスもしくはwell-designed RCTが2遍以上、benefit>>>risk

Level B:RCT1遍もしくは2遍以上のnon-randomized and/or non-controlledな研究 benefit>risk

Level C:編集グループによる一致見解 and/or 限られたエビデンスによるもの

各セクションの内容

Section1 脳卒中の初期診療

Section2 Stroke rehabilitation unit careについて

Section3 入院患者に対するリハビリテーション

Section4 外来患者や地域におけるリハビリテーション

Section5 上肢障害に対するマネジメント

Section6 下肢障害に対するマネジメント

Section7 失語と低栄養に対するリハビリテーション

Section8 視覚障害に対するリハビリテーション

Section9 中枢性疼痛に対するリハビリテーション

Section10 言語とコミュニケーションに対するリハビリテーション

Section11 入院前の生活・役割改善のためのリハビリテーション

Section12 小児脳卒中のリハビリテーション

気になるセクション

私にとって興味のある部分についてまとめてみたいと思います。

Section 3: 入院患者に対するリハビリテーション

 

全ての脳卒中患者は能動的にリハビリテーションに参加しうると医学的に判断されれば出来るだけ速やかにリハを開始するべきである。(Level A)

 

発症24時間以内の頻回のout-of-bed活動(離床)は勧められない。(Level B)

 

患者は、専門チームによる週に5回1日に3時間の訓練を受けるべきである(Level C)。多くの訓練は良いアウトカムをもたらす(Level A)

 

患者は、改善の程度や訓練に対する耐久性を考慮され、それぞれのニードに合わせデザインされたリハビリテーションを適切な強度と適切な期間受けるべきである。(Level A)

 

脳卒中診療にあたるチームメンバーはリハで獲得された動作をADLに組み込むように促すべきである。(Level A)地域における生活にも組み込むべきである。(Level C)

 

患者はリハビリテーションで学んだ各種技術を脳卒中リハ専門看護師の手により反復練習する機会を与えられることが勧められる。(Level C)

 

訓練は、ADLなど実用的な活動を遂行するために欠かすことの出来ないスキルを獲得することが重要で意欲を掻き立てられるような訓練を反復かつ集中的に行うべきである。(Level A)

 

リハビリ計画は、患者の意思決定や文化的背景、また目標に対する合意形成、家族や介護者や医療スタッフそれぞれが何を優先するかなど多くの事柄に配慮し患者中心に計画されるべきものである。(Level C)

 

SCUチームは少なくとも1週間に1回は公式な多職種カンファレンスを開催するべきである。特にリハビリテーションの問題は何か、ゴール設定はどうするか、リハ進行状況の把握、退院後の支援をどうするかなどについて。(Level B)

 

リハビリテーションから地域社会にスムースに戻るために退院前評価を行うことをリハビリテーション計画に組み込むことが考慮されるべきである。退院前評価の要素として次の項目が挙げられる。a)退院前に専門職が自宅訪問(Evidence Level C)、b)安全な生活のため、ベッドや杖といった各種補助具と自宅改修の必要性そして自宅環境調査。(Evidence Level C)、c)ADL支援や患者の自立性を高めるための介護者に対する教育やトレーニング(Evidence Level B)、d)患者と家族が自己管理していけるような手助け、そして適切な医療機関受診ができるような案内(Evidence Level B)

 

退院後に患者と家族(介護者)が自身のヘルスケアについて自律するようそして将来発生するかもしれない健康関連問題や経済的負担を減少させるために適切なタイミングで医療機関受診を案内するために脳卒中ナビゲータの役割にエビデンスがあることを知っておいてください。またリハを受けている患者で脳卒中ナビゲータサービスを利用できる患者はそちらへの紹介を考慮されるべきである。(Evidence Level B)

概ね日本のガイドラインと変わりませんね。やはり課題特異的な関わりが推奨されているようです。

 

Section6:下肢障害に対するリハビリテーション

下肢障害(歩行などのことです)に対するリハビリテーションについては、以下が訓練の基本方針として示されています。

基本となる訓練方針として移乗・移動能力の改善のためには、患者自身にとって意味があり、興味がそそられ、漸進的かつ順応できる難易度で、集中的に課題特異的かつ目標志向的に取り組めることが重要である。

 

下肢トレーニング

筋力トレーニングは下肢機能障害が軽度から中等度の患者には処方が考慮されるべきである。(Early-Level C, Late-Level B)また、筋力トレーニングは筋緊張や痛みに影響しない。(Level A)

 

課題特異的、目標指向型トレーニング反復運動や漸増運動は歩行距離とスピードの改善、起立・座位能力の改善に効果的である。(Early-Level A, Late-Level A)

 

通常の平地歩行訓練が難しい場合、トレッドミル歩行(体重サポートの有無は問わない)練習は歩行距離とスピードの改善のために使用されることが可能である。(Early-Level A, Late-Level A)

 

電動アシスト(ロボット)歩行トレーニングは、さもないとトレーニングが行えない患者に対しては考慮されるべきである。(Early-Level A, Late-Level A)

 

リズミック刺激歩行トレーニングは、歩行速度、Cadence、ストライドと言った改善のために考慮されるべきである。(Level A)

 

バーチャルリアリティトレーにングは通常の歩行トレーニングのアシストとして考慮されるべきである。(Level A)

 

精神トレーニングは下肢の運動学習の補佐役として利用を考慮されるべきである。  (Level A))

 

バイオフィードバックは歩行とバランスの改善のために利用を考慮されるべきである。(Level B)

 

歩行補助具

AFOは適切な評価により下垂足があるとされる患者、また継続的にみてその効果が確かだと思われる患者に対しては処方されるべきである。(Early-Level A, Late-Level A)

 

FESは限られた患者にとって筋力と歩行能力の改善に役立つもののその効果は一時的である。(Early-Level A, Late-Level A)

 

歩行補助具、車椅子、その他アシストデバイスの必要性は患者それぞれにおいて評価されるべきである。(Early-Level C, Late-Level C)

 

装具を処方するかどうか必要かどうかは長期に必要となるという予測に基づいて行うべきである。(Early-Level C, Late-Level C)

 

装具は一度処方された後も再調整が必要かどうかまた不必要になっていないかどうかなど適宜再評価をする必要がある。(Early-Level C, Late-Level C)

 

装具に関しては、まだまだエビデンスが十分でなさそうなことがわかります。早期からの長下肢装具やGait Solutionなど、そのあたりの勧めが出てくることを期待したいです。このあたりは日本から発信されるでしょうか。

Guidelines for Adults Stroke Rehabilitation and Recovery: A Guideline for Healthcare Professionals From the American Heart Association/American Stroke Association

Guidelines for Adults Stroke Rehabilitation and Recovery: A Guideline for Healthcare Professionals From the American Heart Association/American Stroke Association

Carolee J. Winstein, Joel Stein, Ross Arena et al. 2016.5.4. Stroke

 

こちらは、アメリカ心臓協会/アメリカ脳卒中協会がまとめたガイドラインです。このガイドラインはレベルクラスという2つの段階づけにより各種リハ効果をみています。レベルは原著論文の質の高さ(複数のRCTやMeta-analysisなどされていればAで、デザインの質が落ちればB、Cとなる)により分類され、クラスはbenefitとriskのバランスです。ベネフィットがリスクを大きく上回るため、ぜひ行ったほうが良いと一般的な見解の一致が得られているようであればクラスⅠ、議論があるものについてはクラスⅡ、効果が無い、もしくは害になるというものはクラスⅢというように分類されています。

全体を翻訳するには量が膨大なので、理学療法士としてリハビリを行っていく上で気になるセクションを抜き出して紹介することとしました。ちなみに、こちらのガイドラインのfirst author;Carolee J氏は、南カリフォルニア大学の教授で理学療法士です。リハ医ではありません。すごいですよね。日本なら、絶対に医者の仕事になってしまいますよね。

 

まず、脳卒中リハのキーポイントが以下です。

患者・家族もチームの一員であるということが非常に重要なポイントで近年強調されています。

脳卒中リハビリテーションは、患者、家族、介護者、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、MSW、栄養士、臨床心理士など全ての関連する人間がコミュニケーションをとり協同することがリハ効果を最大化するために最も重要である。

 

以下、CSBPRと同様に気になるセクションをまとめます。

 

入院患者に対するリハビリテーション

レベル クラス
患者さ早期から組織化された専門職チームに寄る早期リハビリテーションを受けるべきである。 A
Benefitや患者個々人の耐久性など鑑みて適切な強度のリハビリテーションを受けるべきである。 B
超早期(発症24時間以内)からの高強度リハビリは推奨されない。 A

組織化された専門職によるリハビリテーションの提供は、死亡率を減少させ施設入所による介護を必要とする可能性そして能力障害が長期に渡る可能性を減らすだけでなく、回復を促進させADLの自立度を高める。しかし急性期リハに関しては、その介入に関する多くのRCTが存在するもののその対象数規模は小さく、大規模なRCTというのは慢性期患者の改善にフォーカスしている(ことは残念である)。急性期リハのタイミングについては重要な問題であるがこちらについても現在物議を醸している状態が続いている。

本文より、日本語訳は筆者

歩行能力

移動能力改善のための訓練の重要な要素は以下のとおりである。

自発的に課題特異的な訓練に取り組むことと実用的な動作練習を行うことである。訓練は漸進的に難易度を上げより意欲をそそられるものであるべきであり、訓練は十分な負荷、頻度、期間そして適切なタイミングで行われるべきである。
レベル クラス
脳卒中後に移動能力障害が出現している患者に対しては集中的で反復的な移動課題特異的なトレーニングが勧められる。 A
脳卒中後の下垂足のような修正可能な機能障害に対しては下垂足を代償したり、移動能力・尖足・膝関節の運動学的動態・歩行のエネルギー効率を良くするためにAFOが勧められる。 A
歩行能力を改善させるために集団サーキットトレーニングは悪くないトレーニングである。 Ⅱa A
心肺機能トレーニングと筋トレの複合トレーニングは歩行関連能力の改善のために悪くないと考えられる。 Ⅱa A
電気的筋刺激療法は下垂足に対するAFOの代替法として悪くない方法である。 Ⅱa A
トレッドミル歩行(体重免荷に関わらず)もしくは、通常の平地歩行を通常のリハビリテーションに加えて行うことは歩行能力の改善に役立つかもしれない。 Ⅱb A
通常のリハビリテーションに加えてロボットアシストされたトレーニングは運動機能そのものや歩行能力の改善のため考慮されるべきかもしれない。 Ⅱb A
脳卒中急性期における歩けない患者もしくは強い歩行困難がある患者に対して体重サポートを受けながら行う各種デバイスを用いた歩行練習(トレッドミル、ロボット、サーボモータ、電気機械サポート)は考慮されるべきかもしれない。 Ⅱb A
鍼治療が運動機能・歩行能力改善を促すという十分なエビデンスは無い。 Ⅱb B
毎日の活動にTENSを組み込むことで歩行能力や弱い筋力、歩行スピードが改善するかははっきりしない。 Ⅱb B
リズム音刺激が歩行スピード・協調性を改善するかどうかははっきりしない。 Ⅱb B
筋電図的バイオフィードバックによる歩行練習の効果ははっきりしない。 Ⅱb B
バーチャルリアリティは歩行能力改善に役立つかもしれない。 Ⅱb B
脳卒中急性期における神経ファシリテーションの効果は他の治療法に比較し効果は明らかにされていない。 Ⅱb B
プールトレーニングの効果ははっきりしない。 Ⅱb B
フルオキセチン(抗鬱薬の1つ)やSSRIが運動機能改善を促進させるかははっきりしない。 Ⅱb B
レボドパが運動機能改善を促進させるかははっきりしない。 Ⅱb B
デキストロアンフェタミンやメチルフェニデート(どちらも覚醒剤の一種)を運動機能改善を促進するために使用することは勧められない。 B

 

下肢筋力維持・増強運動

2007年のreviewでは、筋力トレーニングは筋力を改善させることは分かったが、歩行能力の改善には転移しないと結論づけられていた。しかし、近年のmeta-analysisにおいて発症後6ヶ月経過した地域社会における脳卒中患者に対して行われた筋力トレーニングは歩行スピード・耐久性ともに改善させることが分かった。

神経筋電気刺激(NMES)は、近年のレビューにおいて慢性期脳卒中患者に対してわずかだが確かな歩行要素の改善に働くと結論付けられている。急性期においても従来のリハビリテーションに追加する形で利用することで歩行を改善させるRCTも存在している。下垂足に対してAFOとNMESを比較したRCTによるとどちらも同程度の能力獲得に至ると結論付けられている。さらには6ヶ月後のフォローにおいても効果は維持できていたとされる。

Rhythmic Auditory Cueing(RAS)は、パーキンソン病患者の歩行訓練に良く用いられる方法だが脳卒中患者においても歩行スピードと歩幅を改善させることが分かった。しかし臨床において利用するためにはさらなる研究が必要とされる。

 

まとめ

 

気になる部分だけpick upして確認してみました。

どちらかと言えば、AHA/ASAのガイドラインの方がエビデンスが網羅されうまくガイドラインに反映されている印象でしょうか。

ただ、内容自体に大きな相違は無いですね。

課題特異的に本人にとって適切な難易度の訓練を提供することの重要性が、最新のガイドラインでも示されています。

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